経済学の泰斗の履歴書に倉橋由美子の「聖少女」からの引用が出てくるとは思わなかった。
もしかして、主人公の「ぼく」のモデルは、その場面だけでなく、未紀とのかかわりにいたるまで青木昌彦なのでは。青木昌彦と同じように「ぼく」も理論的指導者としては運動の論文をペンネームで提供したことになっている。青木昌彦、あるいはその一派と倉橋由美子は面識があったのでは。それはそれで興味深い。倉橋由美子の小説の読み方がかわる。
一方、なかったとしたら。あの学生運動の指導者たちのそののちは、比較的よく知られたエピソードだったということになる。一般的な風俗といったところか。ならば、アメリカ大使館も知っていたのではないか。どちらにしても底知れぬ鷹揚さである。