昔、稲垣足穂の小説に高踏的な言辞を弄する、世間や生活と隔絶した少年たちが出てくる短編があった。
少女漫画に出てきそうな天才的な少年たちとでもいうか。
こちらは多くの場合、永遠にその姿を失わないというか、時が過ぎていかない場合が多いのだが、
その短編では、彼らが長じてどのようになったかもすこし触れられていた。
何の変哲もないというか、完全に天才のおもかげなどないものとなっていた彼ら。
少女漫画を持ち出したところで、現在ではミスリードというか,死語を使っていることになるのかもしれないけれど。
足穂が描いたような少年たち、確かに私の回りにも身近にいたような気がする。特に高校時代までは。
定義からして身近というのは矛盾しているのだけれど、確かにそう感じていたのだ。
それから以降は全くそういう者に出会わない。
若いがための錯覚だったのか、そのような者たちが進む世界とは違う世界に生きることになったためということなのか。
過去そう感じていた人のその後が分かれば、どちらが妥当なのか判断の糧になると思うのだが、
今となっては、誰のことをそのように感じていたのかさえ定かでなく・・・。